steam 『SOMA』 クリア
ネタバレありなので未プレイの方は注意
調べずに遊んだ方が間違いなく楽しめます
(核心的な場面のネタバレは避けています)
SOMAをクリアしました。(4月25日までセールで約1000円みたいです
プレイ時間は8時間弱、ジャンルはSFホラーFPS。日本語化あり。
過去作にはAmnesia: The Dark Descentというクトゥルフ的なコズミックホラーもあるFrictional Gamesの作品です。
こちらも非常に面白い作品でした。
SFホラーは私の最も好きなジャンルの一つです。
ホラーの中でもSF寄りな作品ということは、つまり想像し得るifの世界の怖さを表現した作品だということです。
私達の生きる世界と地続きに描かれたそれは、物語の世界観に入り込みやすく、かつ人間としての根源的な恐怖を喚び起こします。
SFホラーの中で私の好きな作品は、「酔歩する男」と「クラインの壺」です。
どちらも名作と名高い小説です。
今ではありふれた題材になってしまったタイムトラベルやVRシミュレーターのお話ですが、これらの中に潜む恐怖を、自身の存在の根底から覆されるような体験でもって味わわせてくれます。
どちらも至高の読書体験でした。
さて、今回プレイしたSOMAの話に移ります。
SOMAは更に一歩進んだ未来感の設定で、人間の意識に関するお話です。
この世界には理想郷があります。その言葉通りに理想を形作った世界で、その名をARKと言います。
この世界の人々は滅びゆく地球を捨て、プログラムの世界に理想郷を作り、肉体を捨ててARKに意識をインストールし、半永久的に生き続けることを決意します。
決意すると言ってもそう簡単なことではなく、ARKを巡る人々の様々な葛藤が、退廃的な世界に残されたオーディオログやPCのテキストデータによって顕わになって行きます。
また、道中ではアンケートを尋ねられることが何度かあります。
是非とも真剣に答えるべきでしょう。
ゲームの進行度合いにつれて、自らの心境の変化を手に取るように知ることが出来ます。
何も変化はしないかもしれません。人によって感想が異なると思います。
まずそれがこのゲームの面白いポイントの一つです。
アンケートという形に留めることからもわかるように、このゲームは明確な答えを示しません。
意識・肉体という概念における問題を提起して、道中でそれに纏わる諸問題を発生させ、アンケートによって自らのそれに対する感情を問いかけてくるのです。
私は最後にまるっきり異なる答えを選択するようになってしまいました。
本来の考え方が変わっているかどうかはさておき、少なくともこのゲーム世界での体験においては大きく答えを変えるに値する出来事が起こったのです。
そして、この世界は人間社会としてはもうほとんど滅びてしまっているのですが、とても美しいです。
廃墟と自然と機械の融合したデザインが世界観に深みを与えてくれていますし、ステーション内は暗がりと明かりのコントラストが、得体の知れない恐怖に震えながら探索するその雰囲気作りにとても役立っています。
その中でも特に水中の景色は目を見張るほど綺麗でした。定期的に水中の場面に切り替わり海中散歩をすることになるのですが、彩度が低めのステーションから水中に切り替わった時の開放感と鮮やかさに感動しました。
もっと素晴らしい場面があるのですが、そこは割愛します。
ゲームシステムの話に移ります。
このゲームは前作と同じく本当に怖いです。
怖がらせ方を熟知しています。いわゆるびっくりホラーな要素だけではなく、演出面での怖がらせ方を研究しているのだと思います。
それはシステム面にも表れていて、音や光に反応する・近づくと襲ってくる・近づくほど画面のノイズが激しくなる・覗き込み(リーン)動作がある・触れるとアウトで敵に攻撃することは全く出来ない・だが触れても即死にはならない。
箇条書きにしましたが、これはホラーゲームを研究した結果、これが最善だという結論に至って選択したシステムであるように感じます。
ちなみに以前こんな記事がありました。
Choke Point | 『Amnesia』開発元が分析するホラー・ゲームの問題点
この記事は以前読んで印象に残っていたのですが、とても優れた分析だと思いました。
てっきりAlien: Isolationの開発者だという思い違いをしていたんですが、SOMAの開発者の方のインタビューだったんですね。
今これを調べ返して納得しました。
ホラーゲームとしてFrictional Gamesに勝る作品を作り上げた作品は今のところ知りません。それくらい優れたホラーだと思っています。
今作はそのホラーゲーム的な怖さと、SF的な怖さがどちらも存在してかつハイクオリティに纏め上げられているので、高評価だったのにも納得です。
正直ゲーム性としては探索してインタラクティブなオブジェクトを探す繰り返しなので単調さも感じるのですが、慣れてさえしまえば物語を体験するのにこれ以上のものはいりません。
ゲームとしての体験、更にはFPSとしての体験を本当に大事にして作り上げた、至高のSFホラーです。
(93点)