小説 『あなたの人生の物語』 読了
かつて、ウィリアム・ギブスンがこう語ったことがある
―「未来はすでにここにある。たんに均等に分配されていないだけだ」
(どうでもいいけど非アフィです。
気が向いたら付けるかも。まぁどうせ大した金にはならないっしょ。)
全てに対して感想簡単に書くって言ってたのに書いてなかったー。
まぁ簡単に書いてから書きたくなったら長いの書き直してもいいよね。
んじゃ手短に。ならなかった。
面白かった順から感想を書いて行こう。
顔の美醜について
これは目次を見た時はコラム的なものだと思ってたんですよ。
んで、最後まで読み終わって、あー面白かったなー、と軽く流そうとしたら結構な文量があるじゃないですか。
しかも、書いてある通りにドキュメンタリー風味。
この世界には、"美醜失認処置-カリーアグノシア-"というものがある。
ペンブルトン大学にある"SEE <徹底的平等を求める学生会議>"が推し進め、実際に処置を施した多くの学生がこの大学に通っている。
SEEがそれを推す理由は、主にルッキズム、容貌差別という社会問題から来るものだ。
簡単な舞台設定だけ書きました。
物語は、カリー(カリーアグノシア)に対しての意見を、様々な立場から、様々な角度から人々が交互に発言するドキュメンタリー風味で進んで行く。
カリーを巡る社会情勢を描きつつも、コアとなるのは自分たちにとても近い視線から見たルッキズムについての実感。
あくまでも俯瞰せず個人の視点をそれぞれの立場で書いた構成がとても上手かった。
七十二文字
"名辞"と聞いて、意味が頭に浮かぶ人ってどれくらいいますか?
日常生活ではあまり耳にしない言葉ですが、
めい‐じ【名辞】 の意味
論理学で、概念を言語で表したもの。実際上、概念と同じ意味に用いられる。
というらしいです。
この作品はその名辞に纏わる物語です。
論理学の言葉、なんて小難しそうな概念が出てきましたが、このお話はファンタジーの世界として捉えて問題無いと思います。
つまり、この世界における錬金術師が使う呪文が "名辞" というだけの話です。
この世界の錬金術師は "命名師" と呼ばれています。
名辞でもって命令を与えると、ゴーレムが歩き出します。磁器の馬が歩き出します。
創り出されたオートマトンは、作業を分担して工場で働いています。
だけど、テッド・チャンがただのファンタジーを書くはずがありません。
SFらしく、あり得そうなそれらしい理屈を組み上げています。
この本について私が一番感心した点は、ファンタジー的に想像し得るそれぞれの題材を、豊富な知識に裏付けされた学術的理論によって(私はその妥当性を判断出来ないがそれは置いておく)、机上の理論ではあるが確かに現実にあり得そうな世界観を形作りイメージを膨らませ、私たちにも咀嚼しやすい物語として展開してくれることにある。
理論が補助となって私たちの想像力を手助けしてくれ、現実が拡張されたような感覚が味わえる。
これぞSFの醍醐味だ。
私たちに想像力の翼を授けてくれる。
物語は、昨今叫ばれている、AIに仕事を奪われることにも関わってきます。
何よりも私はこの短編の世界観が気に入りました。
あなたの人生の物語
「メッセージ」として、映画も上映間近な表題作です。
多くを語るのはやめておきましょう。
しかし、この短編を映像化することは出来るんですかね?
個人的には映画を観る前に原作を読むことを推奨しますよ。
よっぽど出来の良い映像化である可能性も無くはありませんが…。
想像力を広げてくれるという点では、この作品が一番でした。
今までに考えたことも無いような世界を垣間見ることが出来ますよ。
本当にすごいです。
地獄とは神の不在なり
物語を咀嚼するのが難しいお話でした。
何しろ宗教に関してはあまり身近に感じたことが無いので…。
ですが、なかなかに興味深い世界観でしたよ。
ニールは義理の両親の主張が正しいとは思っていなかったが、仮に正しいと思えば楽な気持ちになりはしないかと思いはじめた。
たぶん、正義などまったくないという現実にクラスよりも、正しい者が報われ、罪人は罰せられるという物語のなかに暮らすほうがいいのだろう、とニールは考えた。たとえ正しさと罪深さの基準が自分には受け入れにくいものであったとしても。
ここら辺がすごくCarnivalの九条理紗っぽかったです。
考えているうちに、なんだか訳がわからなくなって、とにかく、私は悪い子なんだ、だからいけないんだ、と、その気持ちだけが残るのです。そして、そうやって自分だけが全部間違っていることにして、自分を責めていれば、なんとなく落ち着くことが出来たのです。つらくなくなる訳ではないのですが。
もし、誰か絶対の人に全部を話すことが出来て、その誰かが、これは正しい、それは悪い、と決めてくれたら、きっと何もかもうまくいくのに、と思いました。
折に触れて、また考えてみたいお話ですね。
残りはさらっと行きます。
バビロンの塔
これはそれなりに楽しめて、この小説の入りとしては悪くなかったかな。
まぁそこまで印象に残るお話では無かった。
理解
一言で言うと異能バトル漫画の世界です。
だけどSF的解釈をしてくれます。
野崎まど「know」とか、伊藤計劃「虐殺器官」を思い出した。
超高次元バトルの描写がいいんだよね。
ゼロで割る
これは一読しただけだと頭に入ってこなかった。
話の構成自体が数学的な一つのアイディアだと思うんだけど、もう一回読んでそれを確かめないと何とも言えない。
人類科学(ヒューマン・サイエンス)の進化
とても短い作品ですね。
一番あり得そうな、いや、既に現実になっているのかもしれないですね。
冒頭で引用したウィリアム・ギブスンのセリフを思い出してみてください。
さて、全てのレビューが終わりました。
手短に、とはなんだったのか。書き始めるときっちりやりたくなる性格が災いして、こんなに書いてしまった。
まぁ書くのは嫌いじゃないのでいいでしょう。
正直なところ、ここまで書くならアフィリエイトを設置したほうがブログを書くモチベーションに繋がりますね…。
まぁそれは追々。