映画 『潜水服は蝶の夢を見る』 視聴
タイミング的にそういった映画を見たい気分になったので、観ました。
簡単なあらすじは、イケイケなファッション雑誌の編集長が突然倒れて全身麻痺に陥った。
そこで唯一自らの意志で動かせる左目の瞬きのみを使ってコミュニケーションを試みる、といったお話。
閉じ込め症候群と呼ばれているものらしいのですが、以前仰天ニュースで目にしたこの症状が衝撃的で、そのときにこれを題材にした作品は無いかと調べた内の一つがこれで、今こうして観たというわけです。
正直なところ見る前はもっと絶望的な暗い映画だと思っていました。
だけど、全くそんなことは無かったです。
もちろん症状が症状なだけに実際の状況というのは相当に絶望的なものだし、そういった作品として描くことも出来たはずです。
もっとおどろおどろしい描写も可能だったはずですが、この作品はそうではありませんでした。
そこら辺はフランス映画っぽさが出てるんでしょうかね?
映像表現に拘っていて、視聴者にこういった感情を抱かせたいといったようなあざとい演出が見られなかったことが、重たい題材であるこの作品にとって良かったのかもしれません。
苛立ちだったり、楽しいことだったり、怖い描写も、どれもさらっと流れていってしまいます。
重たい症状を重たく描写する作品といえば「震える舌」がありますが、あれは怖かったですね。狂犬病に関するお話です。
あと全編ではないですが、ほとんどの映像がFPSですね。
これは演出としてとても効果的でした。
過去の映像と、現在との区別がわかりやすかったです。
それに、閉じ込め症候群を映像にするならばこれしか無いですよね。不自由さが手に取るように伝わってきました。
そんな感じで、この片目だけのコミュニケーションを用いて1冊の本を上梓するといった作品なのですが、途方もない苦労ですよね。
原作は脚色入ってるんですかね?
そのままを小説にしたとしたら、記憶のみでお話を構築しているということで、なかなか纏まった作品にはならないんじゃないかと思いますが、逆にそれなら読んでみたくなるかもしれません。
少なくとも映画に関しては半分フィクションみたいなものなんじゃないかなと思ってます。
あ、ちなみにこの話自体はノンフィクションですよ。
ふと目にした宣伝文句が、お決まりの調子で「泣ける!」といったものだったんですが、この作品はどうなんですかね。
本当に泣かせるために作ったと思いますか?
サラサラと流れるように詩的な描写で描いたこの作品を俗っぽい定型句に押し込めてしまうようなその態度が邦画の質にも表れてしまっているんだと思いますよ。
いや、作り手批判というよりはスポンサーが作り手に対して求めているものに対しての話です。
余計なことを書いてしまいましたね。
『潜水服は蝶の夢を見る』、いい作品でしたよ。