ストラスちゃんネット

ユーザー投稿型コミュニティブログ。執筆者はゲーマー中心で投稿ジャンルはエンタメ全般。随時寄稿者募集中。

“常連さん”は僕の夢でした

僕には夢がありました。

 

 

 

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仕事帰り

酷く疲れた身体に冬の寒さが身にしみる

 

こういう時は酒をひっかけてから帰ろう

 

やっぱ寒い日は熱燗で

 

 


慣れた足取りで店の前に着き、暖簾をかき分ける


「ああ、いらっしゃい」


礼儀を残しながらも気さくな言葉で迎え入れてくれる大将

中は6人入れば満席御礼な小さな飲み屋だ

 


「今日は良い酒が入ったんですよ」

「じゃあ、それください」

「まいど」

「あと、いかさしも1つ」

 

 

席に座るとあったかいおしぼりとお通し


そしてすぐ横に頼んだ冷酒が置かれる


そういや熱燗って言ってなかったっけ 失敗

 


仕方なく冷酒を口に運ぶ


美味い、いいじゃん、これで正解


結局、美味い酒を飲めば身体が暖まるもんなんですよ


冷酒でよし

 

 

「はい、これ、いかさし」

「あと端っこで申し訳ないんだけどね、これ」


いかさしと一緒に大将からマグロのブツ切りが盛られた小鉢を渡される


余りものだろうか

いやはや、つまみが増えるとお酒が足りなくなっちゃうなぁ


なんて自分に言い訳しながら笑顔で次の一杯を模索する

 

 

 

あぁ、次は熱燗にしよう


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※このやり取りは完全なる僕の妄想です

 

 

 

 

当時、高校生だった私は
「孤独のグルメ」や「深夜食堂」「ソムリエール」「神の雫」といった
大人が大人をする漫画に惹かれていた。

 


中でも高校生では決して入れない
「個人経営の居酒屋」に強烈な魅力を感じていた。

 


その魅力は衰えを知らず、大学入学時には
人生でやりたいことTOP3に「個人経営の居酒屋の“常連になる”」がランクインしていた。

 

 

 

“常連さん”は僕の夢でした。

 

 

 

 

大学生になった私は
まず“常連さん”になるための練習を始めた。

 

個人経営の居酒屋に1人で入る勇気はこの時の自分にはなかったので
とあるお店のランチに通うようになった。

 

理由は「個人経営」で「老舗感」があって「住居に近い」から。

 

なぜ「老舗感」を狙ったかというと
そのお店の平日ランチを食べにくる客は主におっさんサラリーマンばかりで
若くて私服の自分は目立つだろうなと思ったから。

 


読みは的中。大体お店に行くのが5度目くらい。
お客さんがほとんどいないタイミングでお店に入った時、ついに店長の奥さんに話しかけられた。


「そんな細い身体でご飯ちゃんと食べてんの?これ食べなさい」

 

ふりかけをもらった。


人生で一番美味しいふりかけだった。


ちなみに渡されたのは 丸美屋のたまごふりかけ。

 

 

 

 

 

 

その後何回か通うものの
僕はその店の“常連さん”をやめた。

 

 

 

 

 

 

 

夜型のお仕事を始めるようになって
シェアハウスの友人と酒を一緒に飲むといったイベントがなくなり
どうしても飲みながら誰かと話したいという気持ちになった僕は

 

とある年のコミケの日に

中野のバーに行ってみた。

 


なぜ、コミケの日かというと
まぁそのバーがアニメ系だったり
カウンターにコスプレしてる女の子立ってたりするよ~的なところだったから

 


アニメの話とかする人集まってるのかなーとか興味本位で入ったら
全然人いないし、なんならカウンターにはおじさんが1人立ってた

 


「今日コミケなんでお客さんも女の子もみんないないんすよw」

とか言われてめちゃくちゃ笑ったけど納得した。

 


その後もアニメとかの話題一切なくてひたすら稲川淳二の話してた。

ウイスキーも美味しいのいっぱいあってなんだかんだ気に入った僕は
そのまま“常連さん”になった。

 

 

 

 

 

しかし、通っているうちに
僕はその店の“常連さん”をやめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


どちらも理由は一緒。

 

 

 

 

 

 

 

 

“常連さん”は


お金がないと


“常連さん”になれなかった。

 

 

 

 

 

これを書こうと思ったのは
この「note」を読んで心の中で泣いたから

 

note.mu

 

 


僕がやろうとして僕ができなかったことをしている人

 

 

“常連さん”になるためにお金を払える人

 

 

 

 

 

 


それだけ余裕のある人が心底羨ましくて

 

 

 

 


この記事を書きながら 僕はまた泣いた。