新作アプリ『世紀末デイズ』のオートプレイ機能にローグライクゲームの未来を見た
『世紀末デイズ』というアプリは遊んだ?
遊んでいないならすぐインストールしてオートプレイ機能を使ってみてくれ。
このオートプレイ機能はローグライクゲームの歴史を変える可能性があるぞ。
- はじめに
- 世紀末デイズの“オートプレイ機能”のココがすごい
- オートプレイ機能が優秀であるからこそ生まれる違和感
- ローグライクゲームの魅力とは?
- 全く新しいローグライクゲームの操作体系
- ローグライクゲームの未来
- まとめ
はじめに
本稿のメインの内容となる新作アプリ『世紀末デイズ』はDeNAとスパイク・チュンソフトの二社で開発されているローグライクゲームだ。
制作には風来のシレンGB2のスタッフや風来のシレン以降シリーズに携わっていたスタッフがいる。
つまり
ジャパニーズローグライクゲームの最先端で戦ってきた人達がガチで作った最新作だ。
詳しくはインタビュー記事呼んで欲しい
しかし、いくらスタッフが不思議のダンジョンの方々でも私はあまり期待をしていなかった。
というのも、私はローグライクはスマートフォンで遊ぶ事に適していないゲームだと思っていたからだ。
ところが、本作をプレイしてみて考えを改めることになった。
本稿では
ローグライクとしても革新的な“世紀末デイズのオートプレイ機能”と、この機能が開発されたことによる“ローグライクゲームの未来”について考えていこうと思う。
世紀末デイズの“オートプレイ機能”のココがすごい
まずは世紀末デイズのオートプレイ機能について語らなければならない。
世紀末デイズのオートプレイ機能の特徴は何といっても「優秀過ぎるAI」という所にある。
この画像をご覧いただきたい。
この画像はまさしくオートプレイ機能の設定画面だ。
もう見れば分かると思うが、オートプレイ機能の設定幅がとにかく多い。
この設定幅の調節だけでプレイ中にプレイヤーが考える選択をほぼ網羅している。
さらに、この設定は3つのプリセットに記録,管理をすることができるため、ダンジョン内でどこでもオートプレイの方針を変更することができる。
プレイ中にオートプレイ機能に求める細かい動きを都度プレイヤーが選択できる形となっているのだ。
この機能幅だけでもすごいのにAIの優秀さはこれだけではとどまらない。
世紀末デイズのAIはローグライクではお馴染みの行動もオートで行ってくれる。
例えば
・1マス先にいる敵をおびき寄せるためその場で攻撃を空振りし、1ターン経過させる
・部屋に入った時、敵の数が多いので部屋全体にデバフ効果をつけるアイテムを使う
・部屋に入った時、敵の数が多いので一旦通路に退却し1本道の通路で戦う
・バッグがいっぱいの時に優先して回収したアイテム以外を投げ捨てる
・食料が落ちているので既に持っていた腐った食料と交換する
正直に言うと、全てのプレイヤーは自分で操作するよりもAIに任せた方が早く正確に探索を行うことができる。
それだけローグライクに特化した優秀なAIを採用しているのだ。
これは今まで誰もが成しえなかった最高峰のローグライク専用AIだろう。
オートプレイ機能が優秀であるからこそ生まれる違和感
しかし、これだけオートプレイ機能が優秀だと必ず付きまとう問題がある。
それは
『私はゲームを“遊んでいる”のだろうか』
という疑問だ。
スマ―トフォンは基本的に常に持ち歩いているという性質上、スマホゲームは出勤やテレビを見ている時等の片手間にプレイする“ながらプレイ”が多い。
そのためスマホゲームはオート機能が優秀なゲームが数多く存在する。
もちろん人気の出るスマホゲームは大抵『プレイヤーよりちょっと頭の悪い優秀なAI』を搭載している事が多い。
ではローグライクの場合だとどうなるのだろうか。
ローグライクを遊んでいて楽しい!と感じる瞬間は人それぞれだと思うが、私が思うローグライクの魅力に“プレイヤーの選んだ行動によって困難を乗り越えた時”がある。
では、その困難を乗り越える方法の選択が自分ではなくAIが選択している場合、魅力を丸っきり失ってしまうのではないか。
私がスマートフォンはローグライクを遊ぶ事に適していないと考えていた1つ目の理由がこれだ。
スマホゲームという手軽さに遊ぶためのプラットフォームに対して、ローグライクというプレイヤーに重要な選択を迫るこのジャンルは重すぎるのだ。
だから
世紀末デイズをプレイし始めた時、みんなもこう感じたハズだ。
「オートプレイが優秀すぎて何もしなくていいじゃん」
「っていうかこれローグライクなの?」
この思考に辿り着くのは至極当然の結果だ。
私も一度は同じことを考えた。
なんせスタッフがシレンシリーズに携わっている。
きっと本格派のゲームなんだ!と考えるのがファンの気持ちだろう。
そこにローグライクの魅力であるプレイヤーの選択を優秀なAIに任せる設計とあらば、ファンの皆様は大きな肩透かしを食らったハズだ。
だがちょっと待って欲しい。
果たしてこのオートプレイ機能はローグライクの魅力を潰してしまった機能なのだろうか。
ローグライクゲームの魅力とは?
ローグライクは昔からコアなファンを大量に製造してきた。
【ローグライク】人類史上最高のゲームについて、熱く語らせてくれ【アスカ見参】 - 永遠の大学生になるために
『1000回遊べるRPG』について語ってみる【KawazAdventCalendar 5/15】
※お二方の記事を参考にさせていただきました。
参考にさせていただいた記事を元にまとめてみたところ、ローグライクは大まかに3つの魅力に分けることができた。
1.ランダム性
毎回冒険に行くことで変化するダンジョン、モンスターハウス、敵の配置、入手できるアイテム等。
ランダム性の高さによってプレイヤーのゲーム体験が劣化しない事。
2.ターン制の戦闘
戦闘面をターン制に統一し、プレイヤーへの優位性を確保する。
プレイヤーとAIが同時に動く規則性によってゲームと対等であると感じられる。
3.プレイヤー自身の上達
ランダム性に対して自身の持てるリソースを費やしたり、選択を行うことで対応できるよう上達する事。
例えば、私が先ほど言っていたローグライクの魅力“プレイヤーの選んだ行動によって困難を乗り越えた時”は、3つ目のプレイヤー自身の上達にあたる部分だろう。
やはりローグライクを遊ぶにあたって
1.ランダム性によってリソース不足や凶悪なモンスターに急に襲われても
2.ターン制の戦闘によって相手の行動を読むことができるため
3.プレイヤー自身の経験則で乗り越える事ができる
その瞬間が最高に楽しいゲームなのだ。
この3つの魅力のうち、どれか1つでも欠けているゲームはローグライクとして欠陥があるのだ。
全く新しいローグライクゲームの操作体系
ローグライクゲームの魅力について認識してもらえたことで、一度話題を戻そうと思う。
果たして本作のオートプレイ機能はローグライクゲームの魅力を潰しているのか?
私の答えは「NO」だ。
なぜなら、本作のオートプレイ機能は例え優秀でも完全ではないからだ。
実は本作のオートプレイ機能ではカバーしづらい箇所がある。
それは
・モンスターハウス
・商店&泥棒
・必殺技スキルの使用
・アイテムの使用
そう、実はローグライクでも特に魅力的な部分である。
大量の敵と大量のアイテムが湧き出るモンスターハウス。
商店で泥棒をするスリルと快感。
そのまま戦えば危険な敵に対してアイテムや必殺技スキルを選択するプレイヤー自身の上達。
この3つでのハプニングはローグライクで最も興奮するタイミングだ。
本作のオートプレイ機能はそこに至るまでの道のりをオートで進めてくれるようになっているのだ。
いや…でも道中のモンスターでも考えて対処しないといけないから楽しいし、それをオートプレイ機能でスキップしても…という考えの人ももちろんいるだろう。
それならばその道中のモンスターの対処を考えるタイミングはいつだろうか?
部屋に入りモンスターを見つけてからではないだろうか?
そこまでの道中は自分で操作する理由はあるだろうか?
むしろ高速移動で部屋と部屋の通路はスキップしていないか?
そこにオートプレイとの違いはあるのだろうか?
また本作のオートプレイ機能の使用の仕方は2種類ある。
1つは最初から最後まで進んでくれるよう常時オートプレイ機能をONにする方法。
そしてもう1つは「自動」のボタンをタップし続ける間だけオートプレイ機能がONになる方法だ。
この2つの方法は明確に使い方が違う。
常時オートプレイ機能はオートで進んでも余裕だから全てをオートプレイに任せる使い方。
2つ目は、“プレイヤーの選択が必要するところまで1ボタンで移動してもらう”という使い方だ。
ローグライクは十字キー操作と非常に親和性が高い。
マス目を1手1手考えて操作して動くのにコントローラーでの操作が非常に適しているのだ。
そのため、スマートフォンでローグライクを遊ぶにも仮想コントローラーを表示して十字キー操作を要求しているゲームばかりであった。
しかし、仮想コントローラーはあまり精度の高い操作には向いていない。
つまり、今まではスマートフォンでローグライクを遊ぶと、歩くだけでも不満を感じるという欠陥を抱えていた。
私はこの欠陥こそがスマートフォンでローグライクゲームを遊ぶ事に適していないと考えていた2つ目の理由だった。
しかし本作はその欠陥を完全に克服する
”歩く操作を1タップで済ませるオートプレイ機能”を実装したのだ。
本作は
1.敵が出てくるまで手動でオートプレイ機能をONにする
2.敵が出てきたらオートプレイ機能をOFFにする
3.操作するかオートプレイ機能を使うか悩む
というように操作することで
ローグライクの魅力的な楽しい箇所をピックアップして楽しめるようにしているのだ。
これは手軽さが売りのスマホゲームでローグライクを遊ばせるにあたって、全く新しく革新的な最高のアイデアだと私は考える。
ローグライクゲームの未来
本作のオートプレイ機能は仮想コントローラーでの操作が正解とされてきた従来のローグライクに一石を投じている。
それこそ、今後スマートフォンでローグライクを出すならばこのオートプレイ機能を搭載していないとマイナスポイントとなり得るぐらいの完成度である。
このオートプレイ機能1つに不思議のダンジョンを作ってきた膨大な知識やデータのアンサーが見て取れる。
また、このオートプレイ機能で新しい操作体系にチャレンジしたことによって
今後の評価次第ではコンシューマ機のローグライクゲームにもオートプレイ機能が実装される可能性がある。
特色、変化をさせた新作をつくることがとても難しいローグライクゲームだが
まだまだ新しい可能性が秘められていると感じた。
まとめ
世紀末デイズは無料スマホゲームとしてリリースされたが、インタビューでもあるように手軽に遊べるローグライクゲームを全力で極めようとした意思が見て取れる。
それこそこのオートプレイ機能1つのためだけに遊ぶのが楽しいレベルだ。
ローグライク好きはぜひとも1度プレイしてみてほしい。
また、本作はあくまでソーシャルゲームである。
キャラクターはガチャから獲得するし、遊ぶにはスタミナが必要だ。
特にガチャシステム自体は私もあまり良いものとは思わない。
もちろん獲得したキャラクターでダンジョンを潜るのは、トルネコやシレンでもよく見られる持ち込み可のダンジョンと何ら変わりはないので世紀末デイズはローグライクゲームだ。
しかし、私はガチャシステムがあれば必ずインフレが必要になりバランスが崩れるものと思っているので、そのうち世紀末デイズはダンジョンとプレイヤーの公平さを失い、ローグライクゲームとしての本質から離れていってしまう気がしている。
だが、あくまで本作はスマホゲームとしてリリースした手軽なローグライクゲームである。
世紀末デイズを遊んでコレジャナイと感じたユーザーは期待外れだったかもしれないが、そもそもそういったユーザーが求めているローグライクは裸一貫でダンジョンに挑む持ちこみ不可ダンジョンであって本作に求めるものではない。
本作がリリースされた価値は新作ゲームというだけでなく
オートプレイ機能もありとても初心者にとってはすぐに楽しめる優しいゲームとなっている所だ。
これで新人ローグライクゲーマーが増えれば不思議のダンジョンシリーズの新作も発表されるかもしれない。
私たち旧世代のローグライクゲーマーはその新作をただ待っていようではないか。
不思議のダンジョンシリーズスタッフの益々のご活躍を願うばかりだ。
※追記
本作は延々とダンジョンに潜り続け、キャラや装備を掘り続けるためローグライクじゃなくてハクスラじゃないかと考え調べてみたが
そもそもローグライクとハクスラというジャンルの定義は曖昧でそれこそ代表的ハクスラのDiabloもローグに影響を受けて作られているという記述もあった。
【特集】今からはじめるローグライクゲーム―歴史的名作とオススメの1本を解説! | インサイド
ローグライクとハクスラの定義については自分の中でまとまっていないため、今回は掘り下げるのをやめておこうと思う。
ローグライクゲームの定義参考サイト